海外起業家(中近東編) 海外起業家インタビュー

【海外起業家インタビュー】トルコ共和国初の日本人弁護士・弁護士事務所:鳥越恵子さん

鳥越恵子さんへのインタビュー

日系航空会社のパッセンジャー・サービス・スーパーバイザーとして、イスタンブールのアタチュルク国際空港勤務中に、国立マルマラ大学法部を卒業。 大学卒業後 KEY DANIŞMANLIK LTD. ŞTİ.を設立し、弁護士事務所とタイアップして、各種起訴、会社設立、債権回収、市場調査、トラブルシューティング、公認翻訳・通訳など、個人・法人問わずトルコ共和国で邦人をサポートする唯一の日本人法律コンサルタントとして活動。弁護士資格取得と共に、鳥越弁護士事務所設立。
2005年、マルマラ大学法部卒業。2007年、KEY DANIŞMANLIK LTD.ŞTİ.設立。
2014年、鳥越弁護士事務所(TORİGOE AVUKATLIK OFİSİ)設立。
ブログ:“トルコの法律”

Q1: 現在、どんなビジネスをされていますか?

トルコ共和国で、弁護士として活動しています。

“Torigoe Avukatlık Ofisi (鳥越弁護士事務所)”

 

Q2: 起業したきっかけは何だったのでしょうか?

トルコ共和国初の日本人弁護士であるということです。

 

Q3: なぜ、トルコで起業しようと思ったのですか?なぜ、そのビジネスを始めようと思ったのでしょうか?

黄色人種に分類されている日本人としてヨーロッパで暮らした時、人種いう透明だけれども超えることが出来ない分厚い壁に虚しさを感じました。『肌や髪や目の色で人を分類する《人種差別》がない国で生きていきたい』そんな私の希望をかえてくれているのがトルコ共和国なのです。

日本の公的機関は、旅券等の発行や邦人の身に何かが起こった時の連絡先にはなってくれますが、裁判やその他の法務は、邦人が個人で対応しなければなりません。日常生活に困らない程度のトルコ語を話せる邦人はいっぱいいます。 でも判決文や公式文書が辞書なしで理解出来るトルコ語能力を有し、トルコ共和国の法律を熟知する人はいませんでした。

公私にかかわらず、急速に成長するトルコ共和国と接する邦人の皆様が、法的トラブルに巻き込まれたり、会社を設立し企業活動を行う際、安心して日本語で相談出来る邦人が、1人くらいいてもいいのではないかと思ったからです。

 

Q4: トルコの起業環境について教えてください。

トルコ人は、世界に類を見ない親日家です。又、他宗教にかなり寛容な為、日本人がトルコ人社会で暮らすのは快適とも言えます。 ロシア、中央アジア、中東諸国、北アフリカ、東欧の中心に位置するイスタンブールには、 世界最大級の空港が、2018年に完成を予定しています。メディアから受ける印象とは裏腹に、 政治も経済も安定しており、地下資源や自然環境に恵まれた、治安のいいトルコ共和国は、 日本企業が世界で最も進出しやすい国の一つだと思います。

例外を除き、外国人が自由業を営むことは出来ない為、外国人が経済活動に参加するには、 会社を設立することになります。2014年4月現在、資本金10,000TLから有限会社を設立することが出来、 株式会社でも、有限会社でも、外国人1人で設立することが出来ます。

 

Q5: トルコでビジネスを行う際に困ったことは何でしょうか?

2022年1月現在、就労ビザを申請する場合は、会社の資本金額が100,000TL以上でなければなりません。

又、法改正が求められていますが、外国直接投資の場合は2人目から、そうでない場合は1人目から、外国人1人に対し、トルコ国籍者を5人雇用する義務が課せられています。

(注意:2022年以降は、今まで以上に為替変動による影響を考慮した投資と経営方針が重要になるかと存じます。)

 

Q6: 起業する際の注意点は何でしょうか?

会社設立を依頼される際、依頼主の意向を反映した定款を作成し、登記してくれる企業や法律事務所をお選び下さい。依頼事項とは違った内容で登記されてしまって、設立早々、定款変更を余儀なくされる被害が出ています。

また、定款や契約書は、弁護士に作成を依頼し、雇用契約書等、トルコ人と締結する契約書は、トルコ語で作成することを、お勧め致します。 観光地の路上や店舗で、日本語で話しかけてくるトルコ人と一緒に起業・取引をすることは、お勧めしません。もしどうしてもという場合は、彼らと面識のない弁護士にご相談下さい。

 

Q7: 起業してよかったと思うことは何ですか?

自分の国でなら、誰に頼らずとも出来ることが、言語を理解出来ない国では、全くお手上げという立場に立たされていることが少なくありません。 相談して下さる日本在住の個人・法人依頼者の方々に日本語で対応し、市場調査を含め、裁判や会社設立、会社法務など全ての法務に日本語で対応することによって、 ニュアンスの違いや言語の壁無しに、異国の地でも躊躇することなく起訴し、企業活動されるのをサポート出来ることです。

 

Q8: トルコで今後、やってみたいビジネス。また、有望なビジネスは何でしょうか?

テキスタイル輸出国でもあるトルコ共和国では、世界の下請け工場だった昔と違い、ブランド化が進んでいます。そんな素晴らしい環境を利用して、ファッション・デザイナーとして、ブランドを立ち上げたいです。

 

Q9: トルコで今後、有望なビジネスは何でしょうか?

今必須とされているのが、シニアレジデンス経営のノウハウです。
その他は、クリーン・エネルギー、地震対策事業

 

Q8: 最後に、これから起業しようと思う人たちへのメッセージをお願いします。

起業に必要な2大要素である意志と行動力に自信があるなら、是非躊躇せず トライして下さい。

ただ、大都会には、英語に限らず多言語を話すトルコ人が少なくありませんが、まだまだ貧富の差が激しく、教育レベルの差がかなり激しく、大都会にですら文盲が存在するのが現実です。 また、治安は大変安定していますが、公開されているよりもずっと失業率が高く、イスタンブールのような大都会で、日本人が《普通》と感じる生活を維持するには、 東京で暮らすのと同じくらいの資金が必要です。 精神的にも物質的にも、旅行の延長のような気軽さで生きていける国ではないことをしっかりと認識して下さい。 そういった意味で、まず正しいトルコ語をしっかりマスターし、現状判断能力を身につけることをお勧めします。

 

-海外起業家(中近東編), 海外起業家インタビュー