海外起業家(北米編) 海外起業家インタビュー

【海外起業家インタビュー】アメリカ・プロ寿司シェフ養成学校経営:Andy 松田(文男)さん

Andy 松田(文男)さんへのインタビュー

兵庫県生まれ、西脇工業高校卒。カリフォルニア州、トーレンスでプロ寿司シェフ養成学校、Sushi Chef Institute を運営。

Facebook:”Andy Matsuda"

Q1: 現在、どんなビジネスをされていますか?

カリフォルニア州トーレンス市にて、二ヶ月で習得できる寿司シェフ養成学校の経営、主任講師をしております。

生徒は老若男女、ロスアンゼルス地域、アメリカ全土だけでなくオランダ、デンマーク、香港、台湾、アルゼンチンなど世界各地からの参加があります。

 

Q2: 起業したきっかけは何だったのでしょうか?

私の両親が居酒屋をしていたことから、小学校のころからなじみのある日本の食生活、しかし1981年にアメリカに渡米。84年ごろから、 日本の寿司のブームが急上昇し、寿司職人の需要は驚くほどに上昇し、日本人以外の人種の人を巻き込み巻物がまければ寿司職人という、なんとも異常な寿司ビジネス傾向になりました。 寿司職人の技術、保健衛生の知識などまったくなく、寿司の形だけの寿司ビジネスがアメリカの寿司文化を成長させたのです。これでは400年の日本の歴史を持つ日本料理の花形、 寿司のイメージが粉々になると思い、なんとか、人種の壁をなくグローバルな形での寿司の基本的な知識と技術をしっかりと伝承できる学校が必要だと思いました。

日本では5年以上かかる寿司の技術を、シンプルに基本を学べる2ヶ月のシステムを考案し伝承することで、短期養成すしシェフ学校ができたのです。アメリカだけでなく、 世界の景気の悪化、解雇と失業の増加など、多くの社会問題に、新しい職場、人生の展望を寿司ビジネスに見出したい人たちが集まりかけたのです。そんな人たちを責任をもって、 小人数制のシステムで、基本の知識と技術を身につけれる寿司学校をスタートさせました。

 

Q3: なぜ、アメリカで起業しようと思ったのですか?

二十歳の時、すでに寿司職人の世界にいたのですが、どうしても世界の寿司事情を自分の目で確かめたく思い、アメリカ、カナダ、イギリス、フランスなど 16カ国をまわり、最終的にLAの寿司人気を自分で確認でき、将来をこの土地と決め、渡米を考えて25歳のときに単独で包丁一本もってやってきました。 その後、サンタモニカの寿司場をかわきりに、ホテルの寿司場などを経験し、開店も多くこなしました。しかし35歳の時に大病をしリハビリに4年の苦しい生活をしました。 食と生活の大切さと、アメリカの医学に感謝しました。その意味もあり、なんとかこのアメリカに何か恩返しをしたい思い、私の持つ寿司の技術を必要な人に、人種の差別無く伝承しようと思いついたのです。

 

Q4: 最初の起業資金はいくら必要だったでしょう?

寿司の職人時代に貯めた8000ドルだけでした。
LAの小東京のコミュニテーセンターの一角のキッチンを利用し、小さな寿司学校をスタートさせたのが2002年9月でした。

 

Q5: アメリカでビジネスを行う際に困ったことは何でしょうか?また、起業する際の注意点は?

特に私のビジネスは学校という規制の多いビジネスでしたので、市、州の条例、規制が多く、素人の私には理解できない何百枚もの書類全ての質問に目を通し、 書類提出と必要事項を提示しないと認可がおりないので、すべて弁護士の仕事になります、弁護士との会話、必要な役所、事務所どの交流を図るためにも、 英語での会話が非常に大切になります。そしてすべての役所の仕事には時間がかかることを理解しなければなりません。神経的に我慢強いことが大切です。 時間をかけながらでも、一つ一つ進めていく努力と忍耐が必要です。日本の役所のように親切、丁寧、敏速な動きは本当に別世界です。

アメリカのビジネススタイルを理解するまでには本当に時間がかかりました。
PR、広報、プロモーションの方法には沢山あるのでしょうが、簡単に、いい結果をだせる方法というのがなく、 日夜、一生懸命仕事をこなしていくことだと知るまでに10年がかかりました。お金をかけてPRをしても、 期待したほどの結果がでるわけでもなく、やはり、日々の努力、人、各生徒にみとめられ、日本人社会、 近隣のアメリカ社会にみとめられ、その結果が口から口へとビジネスがつながっていくものだと知ったのです。

沢山の失敗が、一歩一歩 前進させてくれました。日々の努力しか、成功への道がないことを知るべきです。

 

Q6: 起業してよかったと思うことは何ですか?

10年という長いようで、短い年月がすぎるのですが、1000人を超す卒業生が育っていきました。

すべての生徒が、入学する前には本当に心配で、不安、心細い気持ちで、入学をしてきています。 現状の仕事に不安をもち、将来さえみえなく、経済的にも不安と、家族や両親の重荷さえ抱えて、 私の学校を信じてくるのです。そんな一人一人が、この二ヶ月という短時間で、習得した技術や知識をもって卒業していきます。 そして、就職、早い生徒で半年で、自分のお店を開店させるというように成長していくのです。人生がまったく変わっていくのです。

従来の仕事をすて、私たちの寿司の業界に一歩足をいれ、そして、すこしずつ変化し、成長し、 経営者となりビジネスの成功者として変化をしていきます。そんな、人間の変化、人生の変化を目のあたりに見届けられることが、私の一番幸せなことです。

寿司の職人時代は自分の作ったものが、お客様が口にして、美味しいと喜んで頂くことに幸せを感じていました。最高のご褒美でした。 しかし、今は多くの卒業生が自分のお店を見にきてほしいといってくれることがなによりも嬉しいことです。 良くここまで、ガンバってやったと認めてあげたい。卒業生だけでなく、その彼や彼女の家族、友人、お客様が 本当に私に感謝してくれることがなによりもうれしいですね。この仕事をやっていてよかったとおもいます。

クラスの内容は本当に時間の長い、人並み以上の忍耐力のいる大変な仕事ですが、こんな人間関係がもてることで、 この仕事への生きがいを感じられます。

 

Q7: もし、今のビジネス以外に新しくアメリカでビジネスをするとしたら、どんなことをしたいですか?

なにも考えつきません。この仕事以外に考えつかないからです。

寿司職人として、レストランを経営していることなんでしょうが、職人のシェフの世界と講師としての仕事はまったく別の世界です。 シェフの世界以上に 国際的にものが考えられる今の仕事に魅力を感じています。なぜかというと、今世界中に卒業生がいますので、 私が世界のどこに行っても卒業生と会うことができるからなんです。そして、必要な情報は世界各地からいつでも入手できるのです。これは、私以外誰にもできないことなんです。

 

Q8: 最後に、これから起業しようと思う人たちへのメッセージをお願いします。

すべて、基本的なことですが、参考にまでになればと思います。しかし、私が成功者であるとはおもったこともないですので、私の心がけていることをお知らせします。

自分が起業をしたいのであれば、それなりの理由をはっきりさせること。

自分がなにをしたいのか、そして、自分がその道のプロであること、 そして、他人に任せないこと、全て自分の責任において判断する環境を作り上げることが大切だとおもいます。

自分の流儀をもち、ぶれないこと、そして、結果を出すまで、絶対にあきらめないこと。

諦めることがあまりにも簡単であるがこそ、そこに逃げ道があります。だから良き結果ができてきません。絶対にあきらめないこと、自分の流儀を通しきることです。

他人の目の気にしないことと、他人を大切にすること

むずかしいことですね。でも、人を大切にすることは人間として基本です。でもビジネスとなると他人の目を気にしてはできないことも沢山あります。 自分なりのアイデアと目標をもって、クリエイティブにビジネスを楽しんで欲しいです。

 

 

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